税理士の言い間違い「利益が出ちゃってます」

働く

〜納税は“痛み”ではなく“経営力”の証明〜

2月~3月。個人事業の方は決算がまとまり、確定申告の数字が確定していく時期です。

私たち税理士事務所が、「今期の納税額は、◯◯円です。」とお伝えすることが多い時期でもあります。

このとき、つい言ってしまいそうになる言葉があります。

「今年はこれだけ利益が出ちゃってますね。」

本来、利益が出ることは誇らしいことです。利益が増えると納税額も増えるので、言いづらい。

「え!!そんなに高いの?」と言われることもしばしばで、

好業績だと、納税額も大きくなり、お伝えするときに、どこか申し訳なさそうな空気が流れてしまう。

これは、間違ったメッセージです。


納税することで内部留保が生まれる

法人にとって、納税額が大きいということは、それだけ価値を生み出したということです。赤字なら、税金はほとんどかかりません。しかし赤字は、会社を強くしません。利益が出て、税金を払いはじめて資金が残る。個人事業の方にとっては、内部留保という考え方はありませんが、納税後が可処分所得であり、事業資金や生活資金となります。

法人にとっては、納税後の利益の積み重ねが内部留保であり、企業体力です。

納税できない会社は、内部留保も積み上がらない。

ここは、経営の本質です。


節税と経営判断を混同しない

節税は重要です。無駄な税金を払う必要はありません。

しかし、

「税金が増えるから利益を出さない」
「税金を払いたくないから無理に経費を使う」

これは、経営判断としては本末転倒です。

税金を抑えることが目的化すると、
本来伸ばせるはずの会社の力を自ら削ることになります。

税理士として多くの企業を見ていると、
伸びる会社には共通点があります。

それは、

数字から逃げないこと。

業績や納税額からも、目を逸らさない。

むしろこう考えています。

「この利益構造を、どう再現するか」
「このキャッシュを、どこに投資するか」

常に業績を真摯に受け止めて、税負担はいくらか?この先どうするか?を直視しています。


納税は“キャッシュ戦略”の入口

もちろん、税金はキャッシュアウトです。痛みがあるのは事実です。だからこそ重要なのは、

  • 事前の利益予測
  • 納税資金の積立
  • キャッシュフロー管理

経営とは、利益管理であると同時に、キャッシュ戦略でもあります。

納税額を見て驚くのは、経営の問題ではなく「準備」の問題であることが多い。

強い会社は納税を“イベント”ではなく“前提”として設計しています。


「出ちゃってます」ではなく「出せています」

税理士は本来、納税額をお伝えするときにこう言うべきです。

「しっかり利益を出せていますね。」

利益は偶然ではありません。社長の意思決定の結果です。

値上げを決断したこと。
採用を我慢したこと。
投資に踏み切ったこと。

その一つひとつが、数字になって現れています。

税金は、その証明書です。


決算は、過去の整理ではなく、未来の設計図を描く月

確定申告や決算は、単なる“締め作業”ではありません。

これは、来期の戦略を考えるための材料整理です。

納税額を見て落ち込むのではなく、

  • 利益率は適正か
  • 固定費構造は健全か
  • 投資余力はどのくらいか

ここまで踏み込んでこそ、数字と向き合ったことになります。

納税は痛みでもあります。しかし、それに耐えられる会社だけが強くなります。
決算は数字をみて次のアクションを考える機会です。数字と向き合うとは、
眺めることではありません。
行動を決めることです。

決算報告の後に経営者にぜひやっていただきたいことは、次の3つです。

①「手残り額」を把握する

まず確認すべきは、売上でも利益でもありません。

税金を払った後、いくら残るのか。

ここが経営の本当の体力です。

・内部留保は何か月分の固定費を賄えるか
・借入返済を含めて安全圏はどこか

“残る力”を数値で把握してください。


② 今期の利益の「再現性」を検証する

今回の利益は、

・一時的な特需か
・価格改定の成果か
・固定費改善の結果か

偶然なのか、構造なのか。

ここを整理しないと、来期は読めません。
利益は「構造」で決まります。

利益が出た理由を言語化できる会社は、次も出せます。


③ 利益の使い道を決める

利益は、持っているだけでは意味がありません。

・内部留保として守るのか
・設備投資に回すのか
・人材に投資するのか
・借入圧縮に充てるのか

経営とは「配分の意思決定」です。

納税はゴールではなく、キャッシュ戦略のスタート地点です。


決算は、自社の「現在地」と「強さ」を確認する機会

納税額を見てストレスを感じるのは自然です。しかし、それは前に進んだ証拠でもあります。

大切なのは、税金の金額そのものではなく、その後どう動くか。

数字は、過去の結果です。しかし、そこから未来を設計するのは経営者の仕事です。

決算は、会社の「現在地」を正確に測る月。逃げずに向き合えば、数字は必ず武器になります。


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